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映画『BLUE GIANT』熱い!けど熱くはなれなかった。評価&ネタバレあり感想

BLUE GIANT


BLUE GIANT』は石塚真一の同名漫画をアニメーション映画にしたジャズアニメ映画です。原作は未読のまま見に行きましたが、同じ石塚真一作品の『岳』という漫画はかなり好きです。
かなり評価も高い作品になっていたので、少し遅いですが見に行きました。


見終わった感想としては正直「評価に困る」作品だったなとは感じます。良い部分もあるし、悪い部分もある。けど悪い部分は悪い部分で映画の良さにもなっているという感じで一概に「酷い映画」とも言い切れないし、「素晴らしかった映画」と言われたらそれは違うなって感じです


とりあえず順番に話してはいきますが、たぶん不満点だらけになってくるとは思いますので映画が好きだった方はご注意ください


まず声優に関しては素晴らしかったと思います。 
主役3人の山田裕貴、間宮洋太郎、岡山天音はキャラクター3人の姿と声質がピッタリハマってたと思うし、特撮などを経験しているからなのか声優演技も大分上手いレベルだと感じます。他の声優陣もかなり素晴らしい自然体な演技でしたね


けど主人公の大などの東北弁に関してはなんか東北弁の演技を諦めてるのかなと思うほど訛りとかが少し微妙だったし、そもそもこの東北弁のセリフ8割が標準語になっていたりと少し聞いてて違和感はあります


声優の演技は素晴らしかったんだけど、細やかな喜怒哀楽の演技に関しては微妙だったし、聞いていて「その状況でそのセリフの演技プランは違うな」という部分が何個かありました。一番それが印象に残ったのはエンドクレジット後の間宮洋太郎の演技でしたね。あの演技とキャラの感情と表情が見てて合わなかったから感動できたのに出来なかったシーンでした


ストーリーについてはスピーディで分かりやすい形にしていたなという印象はありました。なんか10巻分を映画にしたと聞いてたので、漫画10巻分をよく2時間に収めたなという部分では褒めたいし、音楽に力を入れている作品で娯楽部分を見せるならバランス的にはいいのかなとは感じます


ただやはり10巻分を2時間にするからにはデメリットも出てきて、やはりスピードが早いから物語の間だったりというのはないし、キャラクターの人間関係やキャラとキャラとの物語がかなり少ない印象でしたね


例えば大達3人の練習場になっているジャズバーの女性店主が3人を見守ってきたというのは分かるけど、3人が「SO BLUE」での演奏が決まった時や演奏を見に行った時になんであそこまで母親のように涙を流し喜んだり見ていたのかは分からなかったし、
「SO BLUE」の支配人が沢辺にダメ出しをして出演を断ったのに、そのあと数分後のシーンで欠員したバンドのピアノ担当の変わりを任したりしててたぶん漫画だとしっかり描かれてそうなんだけど、映画で見ると優柔不断だなという感じにしか見えなかったです


色んなサブキャラがいたけれど、どのキャラクターもぽっと出だったから彼らとの繋がりや彼らたちのドラマが見えにくくて特に印象深くはないし、ラストでその人達が演奏を見に来てても「コイツ誰だっけ」状態にはなりましたね。
沢辺の実家のピアノ教室に通って夜逃げした女の子がラストの演奏シーン見に来るんだけど、特に説明もなくいきなり現れるから「誰だこいつ」って戸惑ってるし、今これを書いてる状態でもその人で合ってるのか不安になってる


あとストーリーでいうと物語が上手く行き過ぎ。映画とかアニメにこんなこと言うのはアレだけど、シンデレラストーリーにしてはやり過ぎというか上手く行き過ぎ。
漫画がどうかは知らないけどさ、大が演奏することなす事で上手く行き過ぎてライブも成功させているからさ、なんか下手したら転生してチートスキルを持った主人公を見ている気分にもなってしまう


その魂あるジャズを聞いて、どう心が震え上がったのかとか、3人の見る目が変わったとか、ジャズという印象が変わったというような部分も「ジャス」のメンバーにはその描写あるけど、他のキャラには多少絵的には表現されてるが詳しくそれが描かれてるかは微妙。だからキャラそれぞれの物語が薄く感じたし、大の演奏もただ凄いってだけという印象しか受け取れない。そんでどんどん上に行くから転生もの主人公みたいな形になっていく


別に成功だとかは悪くはないけどさ、大でも初ライブは緊張するだろうし、成功ばかりじゃなく失敗はあるだろうからさ、そこの描写くらいは見せてほしかったなというのはありますね







次に音楽ですが、音楽についてはど素人なので技術的な部分は話せませんが聞いている限りは曲は素晴らしかったです。どの曲も素晴らしくて、特に映画のメインテーマの曲と、沢辺のソロが聞ける曲はかなり好きです


ただこの音楽にも不満点はあります。ひとつが「音楽は良いけど、音楽の演奏シーンが微妙」という点。これに関しては後で話します。
2つ目が「音楽は良いけど魂が感じられない」です。劇中でも話してますがジャズはより感情や魂を表している音楽だと話しています


ジャズに限らずですが、どの曲にも魂や感情があり、それを乗せることで素晴らしい音楽が出来上がると感じます。俗にいう歌いまわしとか、フロウとかですね。
ただ歌うのであればカラオケ行くだけで良いし、それを表現するからこそアーティストと呼べると感じます
自分が好きなMOROHAさんの『革命』という曲のライムに「ヒップホップもロックもジャンルじゃない それは魂の名前だ」と言うように音楽は魂の叫びで、それをどう伝えるか


それじゃあ、この映画の音楽を聞いてそれが伝わったかと言われたら俺個人としては伝わらなかった。勿論好き嫌いとかもあるだろうけど、それ抜きで聞いたとしてもあまりにも伝わらない。理由はひとつは先も言った物語があまりにも少ないし、スピーディ過ぎるから、今どのような気持ちで演奏してるのか伝わりにくいということ


2つ目はこれはプロに対して申し訳ないが、ただ演奏してるようにしか聞こえなかった。どのように監督の指示があったかは分からないが、俺個人が聞いている限りはそのキャラクターに寄り添い、理解し、そしてそのキャラクターの気持ちになって演奏する…という風には聞こえない


特にメインテーマ曲の最初とラストのアンコールで聴いた時とで、多少は違うが大きく演奏の仕方が変わってたり、気持ちの入り方とか色んな部分が特に変わらない。しかも最後の曲だから、なにか変わるのかなとは思っていたから余計残念ではあった


例えばデイミアン・チャゼル監督の『セッション』のラスト演奏された「Caravan」という曲はこちらもサントラがあり、劇中に音楽が上乗せされてはいますが、明らかに演奏の仕方やドラムの音圧が先に演奏したよりも違ってたり、教師と主人公の互いのドラマがあったからこそ、主人公のドラム演奏シーンに熱さが感じられます


同じくデイミアン・チャゼル監督の『ラ・ラ・ランド』もそうで、ライアン・ゴズリングは3ヶ月ピアノの演奏練習をしただけなのに、ほとんどの曲に感情がしっかりと表現されています。特にやはりラストの演奏シーンはそれがかなり伝わると思います


例えるものが実写ばかりにはなりますが、アニメ作品で言うなら『けいおん!』なんかも演奏にはちゃんと演奏者がレコーディングはしてますが、毎回演奏する度に違っていたりと細やかな部分もあったりはします。
それを踏まえても音楽は良くても、演奏シーン、演奏する人達の熱量に関してはこの映画からは全く伝わらずにただいい曲を聴いただけになります。それだけならスポティファイとかで聞くだけでいいです


仮にそれが成功できたとしても演奏シーンが本作の最大の欠点で、この映像を見るたびに気持ちが離れてしまいます。これが1つ目の「音楽はいいけど、演奏シーンが微妙」という話になります
確かに手書きアニメの部分に関しては素晴らしいし、演奏シーンで時折見せる音楽がアニメーションを動かしてるようなシーンに関しては評価はかなり高いです


ただたまに見せるCGアニメーションの演奏シーンに関してはかなり手を抜いたような感じがして、まるで粘土が動いてるような感覚になってしまい、せっかくの演奏シーンがかなり悪くなります
しかもこれが少しならいいけど、かなりの頻度で見せるから気持ちが離れてしまうんですよね。ていうか見てられなかった


それらをまとめると音楽演奏シーンや音楽のパフォーマンスがしっかりできているかと言われたら微妙で、我々視聴者も観客ではあるから音だけじゃなくて音を引き立たせるパフォーマンスもしっかり見せてほしい。先程の演奏シーンの手書きアニメーションもインパクトはあるし凄いとは思う。けどそれが演奏シーンとして凄さが現れているかと言われたら、この手書きアニメーションに関しても違うなとは言いたい


『音楽』という映画があるけど、手書きアニメーションとかカオスな世界観はあるけれど、音楽も素晴らしいし演奏シーンのパフォーマンスなんかもかなりしっかり描かれていて両方共に手を抜いてない力強さがありました



同じようなCGを使った演奏シーンだと『BanGDream!』や『D4DJ』シリーズは音楽とCGを使ったパフォーマンスはうまいとは思うし、映画やアニメ作品ではないけれど『ヒプノシスマイク』の「Glory of Dust」は曲も素晴らしいし、ラップをするCGになったキャラクター達のパフォーマンスは素晴らしいと言いたくなるMVです

それらを見ている自分としてはCG部分は粗さがかなりあるとは感じたし、パフォーマンス部分も物足りなさは感じましたね
かなり他作品と比べまくっちゃいましたが


映画全体は色々粗さはあるし不満点もあるけれど、素晴らしい作品なんだろうなとは感じられたし、原作を読んでみたいなとも感じました。
さらにその粗々しさや雑さが大たち「ジャス」3人の若さと粗々く夢に進んでいく様と似ているから、狙っているかは分からないけど、そういう風に見えたから計算のうちなのかなとも感じられたりしましたね



■評価

最終評価は・・・





😄😄😄😄😄|😄●●●●

10点中6点です



かなり評価は難しいし悩むし、いい作品でもあり悪い作品でもあるから、このくらいの点数にします。世間の評価はかなり高いので映画館で見ておくべき作品なのは間違いありません。




はい、そんな感じで!

それでは!