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映画『哀愁しんでれら』家庭を築くのに絶対の正解はない。評価&感想【No.702】

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■作品紹介


公開日/2021年2月5日

上映時間/114分(1時間54分)

監督/渡部亮平

製作国/日本

■予告


■あらすじ

市役所に勤める小春は平凡な毎日を送っていたが、ある夜、不幸に見舞われ全てを失ってしまう。人生を諦めかけた彼女の前に、8歳の娘を男手ひとつで育てる開業医・大悟が現れる。優しく裕福で王子様のような大悟に惹かれた小春は、彼のプロポーズを受け入れ、不幸のどん底から一気に幸せの絶頂へと駆け上がるが……。

引用元:哀愁しんでれら : 作品情報 - 映画.com

■ネタバレあり感想

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『哀愁しんでれら』


『シンデレラ』と言えばボロボロの服で義母姉妹にこき使われて、城の武道会ではなく舞踏会に招かれても姉妹に「くんじゃねーよ!バーカ」と罵られ、そこに現れたフェアリーゴットマザー(ディズニー脳)に勝手に庭のカボチャや友人のネズミを馬車に変えられて、そこで舞踏会に行くものの24時過ぎると魔法が解けるから帰らなきゃいけないけど、シンデレラが 城に忘れたガラスの靴を王子が拾い、探し、皆に履かし、シンデレラに履かせたらピッタリだったから結婚しようぜと今思えば凄いスピード結婚だなと。まぁめでたしめでたし


けれど原作のシンデレラってかなりエグいんですって。実はガラスの靴を忘れたのは王子に気を引かせるためにわざと落としたりとか、王子が無駄にしつこかったとか、義姉妹がガラスの靴を無理に履くために踵や指を切ってガラスの靴を血まみれにしたとか、最後は義姉妹は鳥に目をつつかれて失明したとか。イタイイタイ


けど基本皆が知ってるのは絵本やディズニーとかで知られる『シンデレラ』な訳で、そうした奇跡的で女性が憧れるラブストーリーや結婚話はシンデレラストーリーと呼ばれていますね。


はい、STOP!STOP!STOP!(入間銃兎風)
だけどそのシンデレラストーリーが結婚で終わりなんて思ってません?その後もシンデレラストーリーが訪れると?
この映画はそんな幸せを願ったひとりの女性と、完璧を求めすぎた家族の映画になっています。かなり精神食われますよ


物語は小さい頃母がいなくなりそういう大人にはならないと決心した土屋太鳳が、家で火事やら彼氏に浮気された所事故に会いそうだった一人娘を持つ田中圭をたまたま助けたことで結婚するという話。


ここまではシンデレラストーリーではあるものの、そのあとの話がシンデレラストーリーを否定したような話になっているというか、かなり考えさせられるものになっていました。


結婚した後は娘が赤ちゃん返りをしてしまうし、父親は結婚前から一変して他人の家族を下に観るようになったり、かなり他の家庭と比べて自分が優位の立場だと考えたりしてます。その板挟みで土屋太鳳はストレスを抱えて娘を叩いてしまうという流れになりますが、個人的にここまでの流れを観ると父親である田中圭は土屋太鳳を試していたんじゃないかと感じています


というのも田中圭演じるキャラがナルシストやサイコパスという部分も考えられるけどかなりの完璧主義者に見えるんです。だって10歳の頃から自分の体の成長を描き続けるとかなかなかやらないよ。
それに田中圭のキャラは母親にも殴られた事があってそうした母親を観て自分はこんな大人にならないと思ったのかもしれません。


だから田中圭のキャラは家庭や子育てを完璧にこなせる人、何より子供を最優先してくれる人を見つけたかったのかなと思いました。「子供の一生は母親の教育で決まる」と言うように子供の良い将来を作り上げてくれる母親を見つけたかったし、前に別れた奥さんもその完璧さについて来れず離れてしまったのかなと


土屋太鳳が娘を殴ってしまった事は自分も同じ経験をして、それがいけない過ちだったからあれだけ怒鳴ったし「母親失格」と言って出ていかせてしまうものの、娘が母親がいなくなって泣いてしまった。ここら辺に関しては娘が何が必要かを考えた時に母親がいないといけないと思ったんでしょうね。娘が母親が必要だと分かったからもう一度連れ戻したのかもしれません。


つまりはこの映画って大抵の人ならもうお分かりだとは思いますが、「完璧を求めすぎた家族」の物語であり、誰しもがその過ちを犯してしまう可能性も秘めた作品なんです




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実際自分も両親にはなん十回も殴られて、なん十回も貶された家庭の元で暮らして、自分の将来は完璧な人生を送ってほしいとかなりの願望を親に聞かされて生きてきたからこの映画の考えがよく分かるんです。


「自分は絶対体罰しない」「自分は絶対見下さない」「子供には強い願望を求めないで、好きなことをやらせるんだ」という考えがありながら生きてきました。これは皆さんにもあるはずです。親だけではなくて、他人を観て「こんな人間にはならない」とかあるはず。


だけれど不思議な物で20何年も生きてきたから分かりますが「なんだかあの頃の親父に似てきたな」とかって分かるんですよね。「あーあの頃のあの人と同じことをしている」っていう感じがあるんですよ


少し話は逸れましたが自分がダメだと思った人間にはならないと思い完璧を求めた挙げ句、視野が狭くなり、子供の為だ子供の為だと思うばかりに人道から外れたことをしてしまう。その人間の恐ろしさを描いた作品なんじゃないかなと思いました。


ラストの虐殺に関しても「娘がクラスメイトから変な目で見られてしまうのが嫌だから学校へ行きたくない」「ならばそんな低能な奴らなんて殺して自分の子供だけ、家族だけが幸せになればいい」という考えからそうした行動に出たんでしょうね。


だけれどこの家族の考えは分かる部分もあります。いまだに暴力をする家庭、イジメがなくならない学校、子供を無視して嫌になったら離婚する親。そういう家庭や生活にさせないために、自分の辛い子供時代を経験させないために必死に頑張り、子供を守るというのはよく分かりますし共感します


ただそれが全部正しいかと言われたらそうでもない。子供を守るため、豊かに生きるために他者を犠牲にしていいのか?視野を狭くしていいのか?それこそ子供には悪影響では?などなどかなり考えさせられる作品ですし、どの答えも正解で不正解のように家庭を築くことや子育てに絶対と言える正解はないんじゃないかというメッセージもあったように思えました。


それにあの子役のキャラクターもかなり悩ませるというか、映画の中だけでなくて俺たち観客にも試験を与えていた存在になってましたね。

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正直頭が良い小学生だからと言ってそこまでやるかと言われたらそれまでだしそれを置いとくとしても赤ちゃん返りでワガママで自分の思うがままに行動するこのキャラを観てどう思うか。


もし「むかつく」「腹がたった」と感じたのであれば「子育てに向いていない」と分からせたかったのか、もしくはそれくらい子供を育てる事は理想通りにはいかないし本当に大変で苦しいことだということを教えたかったのかもしれません。


ひとつだけこうした苦しい環境から脱却する方法をこの作品は提供しています。それは「なにも望まないこと」です。序盤でもこの会話がありましたが、変に望みすぎるから苛立ってしまうし願いが叶わないと絶望してしまう。だから変に大きな望みを捨てるのもいいかもしれないんです。


だから「子供にはこうあってほしい」とか「妻はこうあるべき」とか「夫もこうしてほしい」とかの高い望みは捨ててもいいかもしれません。
望むなら「家族が全員健康」くらいの方がいいかもしれないですね。


かなり暗い話ばかりになりましたが、映画全体の話をすると前半がかなりエンジンが暖まるのが遅かった印象はあるし、前半部分は少しカットしても問題はないかなとは感じました。


全体的にも少しツッコみたい部分はありましたが後半からのスリラー感はかなり堪らなかったし、邦画として観ると結構勝負に出た作品で個人的には好きの度合いは高いです。


劇中の音楽は頭から離れないくらい邦画としては珍しく印象に残ってるし、映像もかなり綺麗だったのでこの監督はもし良かったミュージカル映画を作ってほしいなとは思いました。たぶんこの監督が作ったら邦画を代表するミュージカル映画が作れそうな気はします。


…けど改めて思うのはさ、この映画の家族は確かに言ってることは分かるけど視野が狭いし子供の為とはいえあんな虐殺するなんてとは思うけど、俺はなんか悲しく感じるんだよね


だってシンデレラみたいに不幸から解放されて幸せになりたかっただけだったんだからさ

■評価

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最終評価は・・・





😄😄😄😄😄|😄😄😄●●●

8/10です。



結構自分の過去を思い出したりしたから余計にキャラクターの気持ちに寄り添って鑑賞したので見終わった後はかなり疲れましたw
けど映画の賞レースに出ても文句はないし、今後の監督の次回作が気になる一作にはなりました。気になる方は是非観ることをオススメします





はい、そんな感じで!

それでは!