■予告
■あらすじ
東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った大学生の山音麦と八谷絹。好きな音楽や映画がほとんど同じだったことから、恋に落ちた麦と絹は、大学卒業後フリーターをしながら同棲をスタートさせる。日常でどんなことが起こっても、日々の現状維持を目標に2人は就職活動を続けるが……。
■ネタバレあり感想
『花束みたいな恋をした』
日本の恋愛映画と言えば大抵イメージしやすいのは少女漫画の実写化作品で所謂シンデレラストーリーだったり、カップルのどちらかひとりが重い病気にかかったり死んだりして大切な人の存在を改めて感じる作品が多かった感じ
最近は映画関係者も「時代遅れ」と思ったのか、はたまた若い映画監督達が「この現状を変えよう」と感じたのか、かなり芸術的な作品や大人な恋愛やリアリティーある恋愛作品が多くなったように感じる。例えば今泉力哉監督の『愛がなんだ』とかね。
その作品もそのひとつで映画の為だけの特別な二人が主人公で恋愛する訳ではなく、そこの道端にいるような、そこのファミレスで話してるような、本当にそこにいても可笑しくない二人の出会いと別れを描いた作品になってる
終電を逃した二人が朝までやっている店で話をして押井守がきっかけで話がどんどん進み、自分の価値観や趣味、考え方が相手と当てはまる部分が多くだんだんと付き合い始めるがそこからの生活の中で色々と噛み合わなくなって別れてしまうというのが大まかなストーリー
ストーリー事態はかなりシンプルだと感じるけれど、その映画の中の演出やちょっとしたメッセージ性であったり脚本なんかもかなり素晴らしい作品だと感じました。
特に印象的なのは冒頭のイヤホンジャックの話。LとRを二つちゃんとつけるのではなくて片方ずつ聞くと聞いている曲は同じなのに違うものに聞こえるというもの。イヤホンは確かに片耳だけで聞くといつも聞こえるギターの音が聞こえなかったり、一部のコーラスが聞こえなかったり違和感はありますね。
まさにこの映画のテーマでもある「恋愛は二つに分けられない。ひとりひとつずつ」というのに繋がるのではと感じます。ちなみにこのテーマを知った時なぜか星野源の恋ダンスを思い出しました。理由はまだ分かりません
序盤菅田将暉と有村架純が出会う前の二人の趣味や好きなことなどを紹介するキャラクター紹介があります。ここでは菅田将暉がイラストを描いてたり、有村架純がひとりでラーメンを食べてブログを描くというひとりでひとつの物を楽しむという生活をしていました。
そこで二人が出会ってひとつの物を二人で分け会うという形にシフトチェンジしましたね。ひとつの焼きそばパンを二人で食べたり、ひとつの漫画を二人で観て泣いたりして。ただそれが段々と二人がすれ違ってしまう
何が言いたいかというとイヤホンを片耳で聞いている音楽のように、向かう先は同じだったはずなのに生活するにつれて一緒にいるための考えが変わってきてしまう、お互いの考えが逸れてしまうそんな悲しい描写を映画の中で表しているのではないのかなと。
そのすれ違い様はかなり分かりやすくて特に二人で観ていた『希望のかなた』という映画は有村架純は楽しそうなんだけど、菅田将暉はあまり楽しめてない描写があります。このシーンで彼ら二人は観ている矛先は同じなのに考えていることはかなり違うと分かります。
二人は『二人で一緒にいて現状維持する』という向かう先がありましが、有村架純は一緒にいたいけど好きなことに包まれた生活をしたい、菅田将暉は一緒にいたいけど一緒にいるためには金がないといけないから働かないといけない現実的なことを考える。こうした恋愛のすれ違いで別れてしまう原因になってしまったし、台詞がなくとも結構映像の中でそうした演出を取り入れるのは上手いなと感じました。
それと同時にこうした忙しすぎる、お金が必要で働かなきゃいけない現実があるから若者の初々しい恋愛が潰されたり、人の才能や発見や好奇心がなくなっていくのかなと思うとなんか悲しくなりますね。だから映画の中で話してた東京湾に荷物を捨てたドライバーの話も分かるには分かるし、それに対しての菅田将暉の意見も分かるんですよね。なんかこのドライバーの話も二人の恋愛も「どっちが悪い」とは言えないからかなり心がモヤッとするというか
ちなみにイヤホン以外でも分ける描写で言えば、『さわやか』のハンバーグとかね。あれもうひとつで出来てるのに二つに分けちゃうからね。あとは『Nintendo Switch』のコントローラー所謂ジョイコン。あれもひとつのコントローラーで対応できるけど、二人でプレイするとき片方ずつ取ってプレイできますからね。
じゃあ彼ら二人が別れてしまってバッドエンドかと思ったらそうではないです。そのあとの別れ話の後は少しスッキリしたのか序盤観てたあの二人の生き生きとした会話がありましたからね。これはかなり微笑ましかった。
そしてここも隠れた描写があって今まで「ひとつのものを二人が共有」という流れから「ひとつのものをひとりずつもつ」という流れになってて、例えば別れ話の後のご飯なんかがそうだし、あと引っ越しの時の「二人のものだったものを二人で分ける」という描写もありました。これに関しては考えすぎかな
何にせよ別れたあとも楽しそうにやってたり、バッタリあっても『ラ・ラ・ランド』のように相手に過小せず健闘を祈るような別れかたをしたりとか
なんかこの恋愛映画何が珍しいって今までの恋愛映画は「こんな恋愛してみたい」と感じる作品は多数あるけど、この作品に関しては「別れるならこんな別れ方をしたい」っていう否定的に捉えてしまう部分が少し憧れを持ってしまうというか、前向きになれるんですよね。ここら辺もかなり素晴らしいなと
別れた後も「なんであんなやつと付き合ったんだろう」とか引きずる部分はあるけれど、ここら辺も菅田将暉のラストのシーンで「自分達が歩んだ道は間違いじゃなかった」とこれもかなり前向きな見方ができるようになってるんですよ。
それにこの映画勿論カップルが多く観ていた作品なんだけどさ、これは自分にも言い聞かせるつもりで話すけどこの作品を観て「自分は大丈夫」とは思わないでほしいし、もし大切な人が本当に大切なら今の現状を見直しても良いかもだし、もし…もしもの話ね?!もし別れた後も「この人と人生刻めて良かった」と思える時間を過ごしてほしい。まとめるとそういう願いが込められた作品なんじゃないかなと俺は思います。
様々なポップカルチャーの話もあるから会話がつまらなくは感じないし、それ無しでも全然面白い脚本。俳優の演技も素晴らしくて、見終わった後はかなり余韻の残る作品だし好きな人と色々見終わった後話せたりもできるんじゃないかなと感じました。
ちょっっっとだけ不満点をあげるなら、なんであの菅田将暉はイラストをSNSにあげなかったのかなと感じました。最近はSNS発進から様々な活動をしているイラストレーターや漫画家がいるから、もしそうすれば彼も成功できたんじゃないかなというツッコミ。
けどかなり上質な恋愛映画だと感じます。同じ日に観た『ヤクザと家族』もそうだけど、今年も邦画の本気が観られそうな感じはするので楽しみです
■評価
最終評価は・・・
😄😄😄😄😄|😄😄😄😄😄
10/10です。
2021年の神作です!あ、ちなみに俺結構長々喋ってて「彼女と別れたのか?」と心配するとは思いますが、ちゃんと付き合ってます!大丈夫よ!!…え?別に心配してない?あ、はい。
はい、そんな感じで!
それでは!