■予告
■あらすじ
かつては魔法に満ちていたが、科学技術の進歩にともない魔法が忘れ去られてしまった世界。家族思いで優しいが、なにをやってもうまくいかない少年イアンには、隠れた魔法の才能があった。そんなイアンの願いは、自分が生まれる前に亡くなってしまった父親に一目会うこと。16歳の誕生日に、亡き父が母に託した魔法の杖とともに、「父を24時間だけよみがえらせる魔法」を書かれた手紙を手にしたイアンは、早速その魔法を試すが失敗。父を半分だけの姿で復活させてしまう。イアンは好奇心旺盛な兄バーリーとともに、父を完全によみがえらせる魔法を探す旅に出るが……。
■ネタバレあり感想
『2分の1の魔法』(原題:Onward)
本来は3月に公開予定だった作品でしたがコロナの野郎のせいで延期して8月に公開しました。たぶんマーベル作品を含めたら2020年初のディズニー作品を拝めることになりますね。ディズニーファンとしては嬉しいし、改めて映画の大切さが分かる瞬間です
とりあえず一言いうならピクサーにしてはかなり王道な展開に走った誰もが楽しめる作品になっているのかなと思いました。ただ王道という響きは良いように聞こえますが、悪く言えば無難ではありました。
ここ最近のピクサー作品は『ファイディング・ドリー』『インクレディブル・ファミリー』などの素晴らしい作品が勢揃いし、『リメンバーミー』は個人的には普通だったんですがラストは素晴らしかったし、『トイ・ストーリー4』も最初は酷評はしましたがある人のレビュー考察を聞いてから見直して素晴らしい作品だなと再確認できたりとピクサーは外れなしとは思ってはいました。
今回の『2分の1の魔法』もあまり期待はしてなかったんですが一応ピクサーだから良い作品にはとどまるかなとは思ったのですが、個人的には王道だなと感じたし何より結構不満点が多かった作品だったので、たぶん最終的な点数は普通なんですがここ最近のピクサー映画として見ると残念な仕上がりだったかなとは思いました。
少し最後まで見ると序盤からあまり納得のいかない部分というかモヤモヤする点はいくつかありました。イアンが父親と再開したがって一度でいいから会いたがってはいました。一応予告通りやあらすじ通りでイアンが生まれる前に亡くなってはいます。
イアンは父に憧れを持ってはいますがなんか録音をミスったラジカセと人のほんの少しの話で父に憧れを抱いていますが、正直見ている側からしたらそこまでイアンの父に対してスゴさとかは伝わらないです。なんか人からエピソードを聞いても「そんな話知らなかった」とは言いますが生まれる前に死んでるので知らないのは当然です
まだバーリーの方が父に対しての気持ちや後悔が強いからバーリーがイアンのような気持ちなら共感は強かったかもしれません。生まれる前に亡くなった親を知りたい気持ちはまだ分かりますが、会いたいとか偉大さを抱く気持ちはちょっと分かり辛いです。
だけれどイアンとバーリーの年齢差って3歳くらいでそうなるとバーリーは3歳くらいで父を亡くしてはいますが、話を聞く限り3歳からの記憶にしては記憶がありすぎるようにも思えます。父親と何をしたとか何を話したとか、父親がいつも言ってた言葉とか、父親が死ぬ間際の姿とか。死ぬ間際の姿の記憶は残るにせよ、その時の決断とかも3歳って普通でも記憶が曖昧なのにかなり記憶がありすぎるのは違和感はありました。
イアンの誕生日になぜ16歳になってから魔法の杖を渡されたのか、魔法の杖を持つほどの父親は何者なのか、なぜ父親は自分を生き返らせる魔法を子供たちに託したのかのかもあまり納得のいく説明はされません。なんかとりあえずストーリーを動かすためになんとなく付けたストーリーに思えたし、父親の自己満足な感じにしか思えなかったです
この序盤の時点で色々と不満点やツッコミところはありますが、まだわんさか出てきます。
この序盤から父親を復活させ再開するために二人の旅が始まります。個人的にはこの旅の仕方というか演出も疑問に思う部分はありました。舞台がファンタジーだからゲームぽくしたかったのかも知れませんが、結構ストーリーの進み方がアイテム頼りだったのは気になりました。『スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け』を見てるときに思い出しましたね
父親を復活させる為には不死鳥の石が必要(ここで賢者の石ではないんだなとどうでもいいことを思う俺)、その場所を知るためにある屋敷に向かって不死鳥の石をありかを示す地図を手に入れなければならない。だけど地図が無くなったからあるもので謎解きをすることになる。ある場面ではあるキャラクターが不死鳥の石を手に入れたら呪いがかかるのでそれを食い止めるアイテムを探さないといけない
いわゆるマクガフィンと呼ばれるプロット・デバイスのひとつなんですが、使うのは良いんだけどこれを多用しまくるとかなりストーリー全体が安直になっちゃうんですよ。アイテム頼りのストーリー進行になると手抜きに感じて、ストーリーが見ててもつまらないと感じてしまいます。
だからイアンの成長とかバーリーとの絆というのは終盤は良かったんだけど、それまではなんか絆を描いてるようで微妙に描ききってなかったしイアンの成長もそんなに見てて感じられませんでした
確かにイアンの成長は魔法の使いこなしで見てて分かるんですが、これも魔法や魔法の杖というアイテムありきで成長を描いてて彼自信の中身があまり描かれてないように思いました。魔法を使いこなせても「僕にはやっぱりできない」と言ってたり、だけれどなんか魔法の成長速度がドクター・ストレンジより早かったり、根本的なキャラクターの成長やストーリーがバラけてるように感じました
あと気になったのがこれ監督が早くに父を亡くしていたらしくて、彼の体験や思いが込められた作品にはなっているそうですが、その割には「本当に父を思って作ったのか?」と言いたくなるような作品ではありますし、彼の体験をキャラクターに台詞を与えて言わせたと思うとあの不自然な序盤も納得はいきます
というのも下半身だけの父親を復活させて全身復活させようとする話ではありますが、下半身だけだから何も見えない父を犬のリードをつけて引っ張るというのは仕方ないにしても「父が大好きでめちゃくちゃ会いたい!」って人の発想ではないと思うw
一番ヤバイのは水中にスイッチがあって押し続けないといけない状況になったとき、父親を沈ませて父親にスイッチを踏ませるという発想。確かに下半身だけだから息は無いにしても下半身だけの父親からしたら「なんで俺濡れてんの?!」って驚くだろうし、最善の策にしても父親を沈ませる発想はなかなか湧かないでしょ。
そう思うとこんなことやらされて、色々とワケわからず連れていかれ、怪我をして、車が暴走すれば何回も転んだりして、父さんからしたらたまったもんじゃないよ。よく再開したときに怒らなかったね。器広すぎて泣くよ
一番の不満点は世界観でしょう。魔法やファンタジーで溢れてて、エルフやケンタウロスやマーメイドがいる世界に科学的な要素が加わり彼らが俺らと同じように現代的な暮らしをする世界。いわゆる『ズートピア』のファンタジー版ですね。
ただ別にキャラクターとしては可愛くもかっこよくもないし、なによりファンタジー世界の現代的な暮らしの要素を取り入れても特にこれといった面白さはないです。アイデアとしては上手くいってるようであまり上手くいってない感じはします。
というのも『ズートピア』は動物が現代的な暮らしを撮すアイデアの中で現代社会の差別や偏見、多様性を上手く取り入れて動物だからこそそれらを分かりやすくしているし誰もが楽しめる作品になっています。だから『ズートピア』はただ動物を現代社会に馴染ませるというアイデア勝負だけの映画ではないし、動物だから有効的にメッセージ性が伝わります。
ただ『2分の1の魔法』はただアイデア勝負だけでその一歩先にたどり着いていないんです。イアンを中心に普通のアメリカドラマ映画を見てる気分になって「エルフだから」「ケンタウロスだから」というそれぞれのキャラクターを生かした特徴が現れてないからだったら普通の人間たちで良かったんじゃない?と思いました。
とりあえずラストは確かに感動的だし、ラストバトルも素晴らしいっちゃあ素晴らしいです。ただ「終わりよければすべて良し」とはなかなか言いがたいくらいそれまでの内容に不満が感じてしまうし、結局メッセージ性もたどり着く部分もピクサーやディズニー映画を好む自分からしたら「あー無難だな」で終わってしまう内容でした。
それでも誰もが楽しめる内容にはなっているのは間違いないです。
ところでスキマスイッチの『全力少年』がわざわざエンドクレジットで歌詞まで出てきましたが、結局この映画と歌どこがマッチしてたの?まさか歌詞の中の「呪文のように」だけを見て採用したとかないよな?
流石にないよな?!?!