『CURED キュアード』(原題:The Cured)【No.659】
■予告
■ネタバレあり感想
ゾンビウィルスが流行しゾンビになってしまった人々が治癒してから社会復帰や普通の人間として生活できるのかを映した作品。
この映画は普通のゾンビ映画とは違いバイオレンスな戦いやゾンビの襲撃から逃げるとかの描写は少なく、ゾンビになってしまった人々の社会復帰や記憶が消えないゾンビ生活の記憶の苦悩を描いたかなり発想が面白い作品です。
例えば今流行りの例の感染症ももし治癒して社会復帰しようとした際その人たちは実際苦しまずに社会復帰できるのか?感染症に嫌な目で見る人々も果たして気軽におかえりといえるのか?
もう少し規模を小さくするなら犯罪者が社会復帰した際迎え入れる場所があるか?被害にあった人はどんな気持ちで見るのか?それをゾンビ版にした感じ
これを言えばかなり面白そうだなとかかなり考えさせられるなと思いますが、実際は別に発想が面白いだけの作品でしたね。
人権問題を扱ってる割にはホラーのようにただ音で驚かせる演出を何度かしたり、ホラー映画あるあるのツッコミ部分もあったりして重い空気のわりにはあまりそれが合わなかったりしてましたね。
ゾンビ時代の辛い過去をフラッシュバックで何回も見せる演出も鬱陶しいし、その過去の回想が主人公だけで同じシーンばかり見せられるから飽きてきますよ。それで周りの元ゾンビ組の仲間が「俺たちも人間だ」とか「辛いことがあった」といいますが、いまいち彼らに共感できなくて、ゾンビもそうだけど走るゾンビとかリアリティーに欠けるから余計辛いことの説明が欲しくなりますよ
なんか走るのもそうなんだけど、ゾンビの呼吸の仕方でゾンビ同士が情報共有したり、治癒薬があるのにゾンビの抗体があるのにワクチンは作らないんだなとかの馬鹿馬鹿しさもありましたね。
それに映画全体の展開も読みやすくて「次あーなるな」と思ったら大体そうなるパターンが多いですね。だからあまり言いたくはありませんが、アイデアだけ出して中身をあまり考えずに製作したのかなと感じました
意外と期待してた映画なだけあって少し残念な作品でしたね。
最終評価は・・・
😀😀😀😀😀|●●●●●
5/10です。
『プリズン・サークル』【No.660】
■予告
■ネタバレあり感想
取材許可に6年、撮影に2年の歳月を得て作られた日本国内では初となる刑務所にカメラを入れて作られたドキュメンタリー映画。これだけでも見る価値はあります。
映画の中身は島根にある刑務所で日本で唯一執り行われている受刑者同士が会話を通じ犯罪の経緯を探り、更正し社会復帰を目指すプログラム「TC(Therapeutic Community=回復共同体)」に参加する若い男性複数名の姿を映した作品。
洋画好きな皆様ならたぶん見たことあると思いますが、受刑者同士がたまにサークルになって座って自分の自己紹介や過ちを皆の前で発言したりするシーンありますよね?それを映した作品です。
海外ではかなり昔から執り行われていますが、日本では実は最近このプログラムが開始されています。
映画を観て感じたのは映画そのものを楽しむ作品ではなくて、勉強になるなって感覚になる作品でしたね。だから中学、高校の勉強には持って来いの作品かもしれません。
それから最後まで観て分かったのは別に犯罪者が全員が全員悪い奴らとか性格がネジ曲がってるわけではないのだなと感じましたね。
今回スポットに当たった男性たちは大抵がいじめにあったり、家庭問題があった人たちばかりでしたね。
そういう過去から逃れたいから、孤独な悲しさから立ち去りたいから犯罪に手を染めとしまったようにも感じて、こうした犯罪をしなくてもいい人たちに犯罪のスイッチを押させたり背中を押したのはもしかすると我々一般人でもあるのではないかと考えさせられます。
それに受刑者が刑務所に入る客観的見方も変わりますね。全員が全員ではありませんが、その服役中の期間でどれだけ自分が犯した犯罪がダメだったのか、社会復帰するためにどうすればいいかと勉強の期間なんだなというのも分かります。
このプログラムに参加されてる受刑者は若い人からお年寄りまで初犯ではありますが様々な人がいますが、かなり熱心に更正し社会復帰しようと頑張ってるのが伝わります。さらに自分だけでなく、相手に対してもアドバイスしたり、本気になって共に勉強するから、彼らの絆も感じられますね。
だけど家庭問題などがあって犯罪を犯したのは分かるし、彼らは復帰しようと頑張ってるのは伝わりますがやはり犯した行為は許されるものではないし、それで「しょうがないな。じゃあ許してやるかな」と思えるかと言われたら難しい話ですね。
劇中でもありましたがプログラムに参加して刑期を終えた人たちがまた再開し現状報告する会があるんですよ。その中の1人が会社を転々としてたり、周りの人と比べたら本当に更正したのか心配になる人でしたね。彼の発言の中に「プログラムが終わったんだから、もういいでしょ?」的な発言をしてて形だけやってたのか、はたまた社会復帰後に生かしきれてなかったのか。どちらにせよ全員が全員更正するわけではないんだなと感じましたね。
それに我々一般人が犯罪者になり刑務所に入れられるということもあり得なくはないということも実感しました。
俺のTwitterにもこんなことを書きましたよ。
そんなプログラムも映画ラストに見せてきたあの数字には驚かされましたね。それなりの結果を出してその数字なのかと。ぜひその数字に関しては映画をご覧いただきたいのですが、なんていうか本当日本は大事な時にのんびりトロトロと遅い国だなと。『ウサギとカメ』の解釈間違えたんじゃない?
最終評価は・・・
😀😀😀😀😀|😀😀😀●●
8/10です。
『娘は戦場で生まれた』(原題:For Sama)【No.661】
■予告
■ネタバレあり感想
正直この映画は語るのが難しすぎてあまりレビューを多く語れません。仮に語れたとしても、この映画はまっさらな気持ちで見に行った方が一番心にグサリとくる作品なんじゃないでしょうか。
『カルテル・ランド』という素晴らしいドキュメンタリー映画がありますが、この映画はそれよりもなかなかえげつない物になっていて、観ていて悲しくはなるし考えさせられるんだけど中々二回目見に行く勇気はありませんね。
映画の内容は学生時代にアサド政権の運動を目の当たりにしたジャーナリストのワアド、医者でワアドの夫のハムザ、そして小さい娘のサマを中心に彼女の戦争の中での生活や、ワアドが目にし体験した出来事をワアドが手に持つビデオカメラに記録されたものを見せてくれるドキュメンタリー映画
政府やロシア軍が一般市民を攻撃し爆撃する中病院が次々と潰されては別の場所に移動するいたちごっこ状態になり、さらに最終的にはハムザの病院しか駆け込むところがなくて何百人の被害者が駆け込むからまさに地獄絵図の状態になります。
何もモザイクをかけずに大人は勿論子供が怪我したシーンや最悪死んでしまった姿まで正直に撮してくるからかなりショッキングです。同時にこれが遠い国での出来事とはいえ改めて同じ地球で暮らす人がこうした状況に陥ってるというのはかなり心痛みます。
あの病院の中で泣き叫ぶ母親のシーンはかなり脳内に嫌というほど記憶に刻まれましたね。
それにワアドではありませんが戦地で負傷した妊婦が病院に運ばれて急遽9ヶ月くらいの子供ではありましたが帝王切開したシーン。息がしない赤ちゃんとそれを懸命に息を吹き返そうと奮闘する医師たちのシーンもモザイクとか無しで見せていて、あれはかなり印象深いシーンでしたね。
最終的には赤ちゃんも妊婦も無事で息を吹き返した赤ちゃんのシーンはお客さんは少なかったんですが、俺も含めて思わず声を出しちゃいましたよ。まさかドキュメンタリー映画で観客と心が一体になるとは思わなかったし、あの一体感は忘れられません
現地に行ってない人から見るとあんな紛争地帯でなんで子供を授かろうとするのか意味が分からないとは思いますが、やはり何かしらの安心は必要だし、どんな状況下でも家族を持ち幸せになりたい気持ちは万国共通なんでしょうね。
そういう意味では戦火の中でジョークを言い合ったり歌を歌ったりするシーンもあってそうしたシーンも印象深いです。たぶんそうやって一時でも笑いあっていないと精神的に乗り越えられないくらいの状況だったかもしれないし、そこに人々が力強く生きているというにも感じられました。
どちらにせよかなりヘビーな内容で2度目を見るのは迷いますが、一度は見に行った方がいい作品なのは変わりないです。ぜひお近くでやっているなら鑑賞をオススメします。
最終評価は・・・
😀😀😀😀😀|😀😀😀😀😀
10/10です。
はい、そんな感じで!
それでは!