■あらすじ
26歳OLの桃瀬成海は、転職先の会社で幼なじみの二藤宏嵩と再会する。ルックスが良く仕事もできる宏嵩は、実は重度のゲームヲタク。そして成海もまた、マンガやゲーム、コスプレ、そして何よりBLを愛する腐女子だった。周囲にヲタクだとバレる「ヲタバレ」を恐れている成海は、普段は本性を隠している「隠れ腐女子」だったが、ヲタク仲間の宏嵩の前では本当の自分をさらけ出すことができた。やがて、ヲタク同士ならば快適に付き合えるのではないかという宏嵩の提案もあり、2人は付き合うことになるのだが……。
■ネタバレあり感想
俺が中学生の時にアニメや声優にハマりだして当時もテレビではアニメブームの火種がついたしオタクというワードが日本に広まり始めた時期。そんな時に俺の母は「アニメなんて恥ずかしい。声優は俳優の失敗者の集まり。オタクなんて世間の恥」と言われたものです。
しかし同級生の友人は「皆オタクなんだよ。自分の好きなものを追求するもの、愛してる人全てが」と言ってました。本当に中学生かというコメントに感動を受けた俺は以後オタクは恥じるものではない、誇らしいものと思い始めましたね
そんなことはさておき福田雄一監督最新作『ヲタクに恋は難しい』。決してオタクではなくヲタク。デッド・プールをデット・プールと間違えるくらい間違えたらなにが起こるか分からないがなにも起こらないから安心して。
そんな『ヲタクに恋は難しい』はTwitterでアレよアレよと非難殺到している。大体は「オタクをバカにしている」「俺たちのようなオタクをまだ古くさい考えでバカにしている」という意見があったりした。
正直あまり期待はしていなかったから特に見た後のダメージは少なかったし、その意見を聞いてからの鑑賞だと個人的には「ん?そうかな?」「言うほどクソではないかな」というのが俺の正直な意見であり感想ではある。
用は毎回言うけど見方によって映画の価値観は変わるし、それは人それぞれだからすぐに変えろとは言わないよ。ただ『キャッツ』みたく「見た目が不気味だから駄作」と言われたら真に受けて駄作にするのもアレだし、『キャッツ』はもうファンタジーホラーとミュージカルが重なった映画としてみれば楽しめる作品ではあったんですよ。
『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』もフリーザモドキが「大人になれ」と発言してほとんどのゲーマーやドラクエファンが「価値観を否定した」「ドラクエの思い出を否定した」と言ってはいましたが、別に俺もゲームは好きだがそんなことは言ってないと思ったし、あのセリフは「ゲームは1日1時間まで」の亜種的なセリフに感じて、「現実と空想の境界はしっかり敷いておけ」という教訓を教えてくれた作品かなと思いました。なにが言いたいか分からない人は記事を読んでくださいまし
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今回の『ヲタクに恋は難しい』も恋愛映画としての描き方やストーリーは良かったと思いますよ。少し相手に対してフワフワした状態で付き合い始めたカップルがお互いを分かりあってカップルとして成長する話しにも見えたし、相手の趣味をどう受け止めて付き合えば良いのか、相手の好きな物を含めて相手を好きになる難しさとか、原作の良さもあるんだろうけどそこは描けていたんじゃないかなと思います。
ヲタクという言葉や人自体そんなに世間的にはまだ良い目で見られてはいないと思うし、じゃあ世間の目を気にして好きな物を隠すのが良いかと言われたらそうではなく、好きな物に夢中になるから人は輝けるし別にヲタクや好きなものに夢中になる人を否定してるようには見えませんでした。
ただこの映画はミュージカルですが、ミュージカルならこういう「私は今夢中だよ」「こういうのが好きなんだ」「好きなことに夢中になるのは素晴らしい」ということを描いたミュージカルだったなら、この映画は良い意味で化けてたのかもしれませんね。
そもそもミュージカルシーンがあるわりに「何のために歌ってるのか」「誰に向けて歌ってるのか」「なぜ今それを歌わなければいけないのか」というのが明確じゃないからただただミュージカルシーンが邪魔なだけなんですよね。オープニングはまだ良いとしても、よく分からないタイミングで歌ったりしたりすることはよくありました。
例えば宏嵩の知り合いの菜々緒演じる花子に色々と話を聞かされて絡み酒されてそれを菜々緒とムロツヨシが歌うシーン。花子がどういう人物か歌う重要なシーンなんですが、彼女は絡み酒をするというだけを歌うからこの作品を映画で初めて知った人は「めんどくさい女なんだな」と認知してしまいます。
あとなぜやったのか一番分からなかったのが、成海が宏嵩とデートする際成海が渋谷に到着した途端歌いだし、数人の女性と『ラブライブ!』風な衣装で歌うというシーン。これをやる必要性は感じられなかったし、タピオカうんたらと歌ってましたがなに言ってるのか基本分からないから本当によく分かりません。
どうやら人から聞いた話だと福田雄一監督は「製作当時『ラ・ラ・ランド』が流行ってたから自分もやりたかった」と聞きました。別にやるのは良いんだけど、なんでもかんでも詰め込んじゃダメだし、ミュージカルの音楽が一貫性はなかったです。ひとつの曲にどんなテーマにするか、どんな風な曲にするかも大事なんじゃないでしょうか
『ラ・ラ・ランド』に影響しすぎたせいか音楽の8割はジャズのような曲調ではありますが、アニメやゲームやオタクをテーマにした映画にしては雰囲気が合わないし、長回しをしたかったのも分かりますが常に同じような画面が続くから絵的につまらないし、なんか周りの景色は綺麗ではないし、特にこのシーンの為に頑張って撮影しましたっていう熱意あるシーンもありませんでしたね。
『ラ・ラ・ランド』『オペラ座の怪人』などのパロディ部分もありますが、パロディというよりただ真似しただけでしたね。
逆に曲はあまり覚えてませんが宏嵩が唯一歌う曲はアニメのキャラクターソングのようで良かったし(ただしここも宏嵩が頬杖ついて成海がネームをしているのを見ていながら歌うだけというつまらないシーン)、絵的に良かったのは内田真礼のライブのファンのペンライトを使ったダンスなどは良かったです。
折角アニメやオタクをテーマにしてるならアニソンやらゲームソングを大人の都合もありそうですが『ダンス・ウィズ・ミー』みたいにバンバン使ったり、ペンライトを使ったダンスとかRAB(リアル・アキバ・ボーイズ)のように後ろで典型的なヲタクの服を着た人たちがブレイクダンスしたりとか、なんかそういうところを使っていかないのは非常に勿体ないです。
まだ言いたいことはあります。
ヲタクの事を理解していないという意見も聞いてはいますが、俺は見ていて理解していないというよりただ単に勉強不足情報量不足な感じはしました。スケジュールが詰め詰めで勉強できなかったのか、勉強する時間がなくてある程度自分の知っている情報で挑んだか分かりませんがとりあえず勉強不足です。
例えば劇中ニコ動のコメント流しのような演出はそもそもなぜそれをしたのか?笑わせようにも笑えないというツッコミはさておき、ああいうコメントはたぶんしないと思う。俺もたまにニコ動でコメントするけどああいうのはしないし、顔文字は使わないな( ・3・)
これは邦画でよくあるんだけど、2ちゃんねるとかニコ動のコメントを映画の製作陣はちゃんとみたことあるのかね?あまり普段見慣れないようなコメントを映画館で見ると恥ずかしいし、虫酸が走る。今回は恥ずかしかった。なぜか分からないが。
アニメやゲームのパロディシーンはエヴァやドラクエとか確かに原作にはあるけどそれだけしか使わないのはどうなの?大人の事情もあるだろうけどさ、例えば成海がビール飲んだ後に「キンキンに冷えてやがる!悪魔的だー!」とか使えるし、ヲタク語禁止の反応も『ジョジョの奇妙な冒険』のエシディシのように「HEEEEYYYY あァァァんまりだァァァァ」を使えたと思う。
さらに成海のあのヲタクが使いそうなネット用語的な話し方も実際そんなにネット用語とかは使わないんですよ。俺も実はこれに関しては最近知って、去年お台場の肉フェスでアニソンライブがたまたまやってまして、そのときのファンたちの盛り上がりや楽しそうな雰囲気に圧倒されたと同時に実はあまりいわゆるネット用語やヲタク用語を使用しないで普通の話し方をするんですよね。そういう意味では偏見してた俺も反省です。
だから俺的にはこういうのも含めて監督や製作陣は勉強不足だなというのは感じられるし、アニメやゲームが大好きな人たちも「ヲタクをバカにしている」という言葉も分からなくはないし、今までヲタクをバカにしてきた人たちがヲタクに対する目線が変えられたりアニメやゲームの価値観が分かる絶好のチャンスだったのにそれを逃したというよりかは、作れなかったんですよ。だから勿体ない。
素材が良いのに素材を生かしきれてない、あれよこれよとミュージカルなどに手を突っ込んでより素材を悪い方向へ持っていった作品。たぶん福田雄一監督よりかは大根仁監督の方がミュージカルを使わずに良い作品に仕上がったのかなとは思います。
最後に佐藤二朗とムロツヨシの件について。
序盤の佐藤二朗に困惑したという人は多くいましたが、たぶんもう佐藤二朗もムロツヨシも福田雄一監督作品に乗り気じゃないんじゃないんでしょうか。これは個人の勝手な見解ですが。
佐藤二朗に関しては福田雄一監督の作品に出ると毎回同じようなギャグはがりだし、今回に限ってはあまり笑えなくてさらに小学生のようなギャグを仕込んできたりしてます。
この作品でもし佐藤二朗の演技に今後は期待しないという人はひとまず最近なら『宮本から君へ』を見て欲しいし、昔なら映画『memo』では脅迫性障害の演技は素晴らしかったし、深夜版の『ザ・クイズショウ』や『やれたかも委員会』など見てくれたら嬉しいです。
ムロツヨシに関しても普段は良い演技するはずなのに今回はなんだかもう振りきってないというか今まで見たムロツヨシの演技の中では最悪です。彼は今回一言二言くらいしか話してませんがキャラが合わなかったのか、はたまた「なんだこの映画」と思いもう手を抜いたのか。
どちらにせよ、彼らは福田雄一にお世話になったとは言え別に無理に出なくて良いような気がします。特に佐藤二朗はもう邦画界では「彼が出れば観客は笑う」のレッテルを張られちゃってるんですから。
あとどうでもいいけど、なんで『オタク』じゃなくて『ヲタク』なんだろう?
■評価
最終評価は・・・
😀😀😀●●|●●●●●
3/10です。
この点数ではありますが別にクソ映画というほどの作品ではなかったかなと思います。最近見た『記憶屋』と比べたらまだまだマシです。
ただやはりどちらにせよ好き嫌いはハッキリ分かれるし、自分がアニメやゲームが好きなら尚更ダメージの喰らう映画になっているのかなとは思いますので、覚悟を持って鑑賞する事をオススメします。
はい、そんな感じで!
それでは!