■予告
■あらすじ
印刷会社の営業マンとして働く真面目な青年・金山和成は、乱暴でトラブルばかり起こす兄・卓司の存在を恐れていた。そんな和成に思いを寄せる幾野由利亜は、容姿は悪いが仕事ができ、家業の印刷工場をテキパキと切り盛りしている。一方、由利亜の妹・真子は美人だけど要領が悪く、印刷工場を手伝いながら芸能活動に励んでいる。そんな相性の悪い2組の兄弟姉妹が、それまで互いに対して抱えてきた複雑な感情をついに爆発させ……。
■Review
『犬猿』は、
『ヒメアノ~ル』の吉田恵輔監督が4年ぶりにオリジナル脚本を手掛け監督をした正反対な兄弟姉妹の姿を描いた人間ドラマ映画。
公開当時評判が高いことは知っていましたが見に行けずに、今回DVDリリースしたので見させていただきました。
吉田恵輔監督は『さんかく』など結構良い作品を手掛けています。『ヒメアノ~ル』は私はまだ見てませんがこれも素晴らしい作品というのは知っていましたので、この作品も期待はしていました。
一言いうなら良かったです。皆が言うほど素晴らしいと思ったり傑作と思ったりは出来ませんでしたが、それでも不思議とまた見たいなと思えるようなヒューマンドラマでした。
まさにタイトルの通り「犬猿の仲」という言葉をうまく映像で表現できた作品であり、全体を通して言えるのはシンプルに「喧嘩するほど仲がいい」「嫌いだから相手のことを気にかける」というテーマが似合う作品でした。
これが兄弟姉妹という設定だから上手くいきましたよね。友人同士とかにしたら何らかのエピソードとか入れないといけないから作るのがめんどくさいし、どの話でも「兄弟」だからという理由で話にツッコミを入れる隙がなく、なによりこうした兄弟通しの嫉妬は限りある人間ではあるけど共感できるし、だけど皆が楽しめる作品になってました。そこは監督の作りがうまいと実感できます。
映画は序盤でどう観客の心を掴むかも重要ですが、この映画は観客の心の掴み方やキャラクター紹介が上手かったです。映画の最初絶対につまらないであろう映画の中の恋愛映画の予告から始まり、さらにお涙頂戴の観た人たちの映画の感想コメントCMから始まります。
見ている人たちからすると「あれ。見る映画間違えた?」と勘違いしてしまいます。だけどこれがすぐに映画の中の映画予告だというのが分かります。この時点で視聴者が映画に注目する準備ができましたし、「あんな始まり方したから、これからどんな話になるんだろう」と期待が高まります。監督自信の日本の恋愛映画やその予告を皮肉ってるようにも見えました。
そこからすぐにキャラクター紹介してきましたね。主要キャラがどんな人か、兄弟姉妹とはどんな関係かなど説明的ではなく、ちゃんと映像やキャラのセリフや言葉使いからどんな関係性でお互いがどんな気持ちかそこで把握できます。
どのキャラも良かったんですが個人的に新井浩文の演じたキャラは好きでした。力で仲間をひれ伏したりクズな部分はあるんですが、けど自分が目標にすることはちゃんとやって弟や家族想いです。その想いとかが空回りしたりして荒くなったりしてしまう、弟とは違う形の真面目さがあってそこに好感が持てました。
家族の借金をほとんど支払って、親孝行して、弟に車を買ってあげたりしたのに、その優しさを認めて貰えなかったり、「ありがとう」と言われないというのが嫌で誰かに認めてもらいたい。そんなキャラに見えたし、どこか共感できる物がありました。
邦画としては本当に作りもは俳優人の演技も素晴らしいとは思いました。ニッチェの江上がこのメンバーの中だと一番自然的な演技をしたのは驚きました。やっぱお笑い芸人って演技上手いんだなあ・・・。自然的と言えば最後らへんで主要4人が談笑するシーンがあるんですが、これもかなり自然的でしたね。あれはアドリブだったのかな?
とここまで色々と褒めては来ましたが、不満点もあります。映画全体は本当に面白く、笑える部分もあり、そこまで暗くもなく映画全体が前に前に進んでいくので退屈しないで見れたんですが、どうも伝えたいことは分かるのに心に刺さらないんですよね。
個人的に合う合わないというのもあるかもしれませんが、なんでそう思ったのか考えた結果そこまでこの映画の中の兄弟姉妹に共感が持てないんですよ。ひとりひとりのキャラの悩みとか分かるし、新井浩文のキャラは面白いし共感する部分もありましたが、兄弟となると共感できるかと言われたら難しいんですよね。
実は私も妹が一人いまして、まず妹はいるけど同性同士じゃなく異性同士の兄妹だから単純にそれが理解しなかったというのもあります。そして何より例え私が弟持ちもしくは兄持ちだった場合でも、この映画の兄弟たちが見た目だと兄弟には見えませんでした。
この映画は脚本が良かったからセリフや会話の中で兄弟と感じられたものの、見た目で見ると彼らが兄弟姉妹には見えませんでした。特に幾野姉妹のような一方がデブでもう一方が美人というのはあまり見たことないです。大人になってから太ったというなら分かりますが、子供のころからデブと美人で別れてたのでちょっとそこがアニメみたいだなとは感じました。
アニメみたいと思ったのがもう一つあって、ラスト15分くらいのシーン。ここで救急車のなかで兄弟の間での反省や謝罪みたいな話をするシーンがあるんですが、このセリフたちがなんともアニメみたいだし、嘘くさいし、現実味はないしでなんかこのやり取りが凄いサムイんですよね。なんかルーキーズ見てるみたい。
ここら辺のちょっとした部分が無ければ素晴らしい作品になれたんじゃないのかなと思います。ところで一人っ子の人が見たらこの映画どう思うんだろ。どうでもいいとか思うのかな?
■評価
最終評価は・・・
☺☺☺☺☺|☺☺⚫⚫⚫
7/10です。
いままで見た素晴らしい邦画って訳ではないけど、なぜだかまた見たいと思えるし何回見ても飽きないんだろうなとは思いました。皆が好きっていう気持ちがなんとなく分かりました。
はい、そんな感じで!
それでは!