■予告
■あらすじ
郊外の豪邸で暮らす心臓外科医スティーブンは、美しい妻や可愛い子どもたちに囲まれ順風満帆な人生を歩んでいるように見えた。しかし謎の少年マーティンを自宅に招き入れたことをきっかけに、子どもたちが突然歩けなくなったり目から血を流したりと、奇妙な出来事が続発する。やがてスティーブンは、容赦ない選択を迫られ……。
■Review
『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(原題:The Killing of a Sacred Deer)は、
『ロブスター』『籠の中の乙女』などで知られるギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモスによるスリラー映画。
この映画で第70回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞しました。ちなみに私はこの作品でヨルゴス監督作品を見るのは初めてです。
映画は古代ギリシア悲劇のひとつである『アウリスのイピゲネイア』をもとにして作られたらしいですよ。詳しくは現段階で見てないんですが、用は生け贄の話だとか。この映画も生け贄の話かと言われたら、別にそういう事ではないけど筋は当たってるのかなと思います
個人的に純粋に思ったのは、この監督の世界観がすごいと言うことと、そこまで考察する難解なものではないなと思ったことでしょう。勿論「これどういうことだろう?」と映像面で気になる部分はありますが、私が言いたいのは考察してやっと本筋のわかる映画ではなく、純粋に見ても怖く楽しめる作品だったということがです。
なのであまり多くの考察はしないでレビューをすると、まず単純に見たときにすべての物が素晴らしいと分かります。映像や音楽、俳優の演技もどれも素晴らしいです。映像に関してはどれも一枚絵として見ても芸術的だし、遠くから映像を撮ってるというのも良いですね。
基本映画はかなり静かな作品です。その分この映画の音楽が現れると緊張感あった作品がより緊張感を増していて、音楽もより印象にの残ります。重要なシーンにこの音楽が出てくるんですが、不思議と押しつけがましいような感じはしないですね。
とにかく全体的に雰囲気や音楽、会話の間の取り方まで全てにこだわりが見えるから、映画の中で常に何が起こってもおかしくない不思議な雰囲気を醸し出していました。見ているこっちも緊張が高まります。
俳優の演技も素晴らしいですよね。コリン・ファレル、ニコール・キッドマンなど有名俳優が揃っているけどその映画の中のキャラにしか見えないです。個人的に素晴らしかったのはバリー・コーガンですかね。
特に彼のキャラは衝動的なサイコパスとか、汚い言葉を使う殺人鬼とか、恐ろしいメイクを使ったりしていなく、どこにでもいるような影が薄い若者を演じていたのですが、言葉使いや間の取り方やストーカー気質な部分などが見ているこちらを恐怖のどん底に落としていました。改めてこういう日常に潜む普通な人間が結構怖いというのが分かりましたね。
それを演じきれたことも素晴らしいし、何より彼の喋りや言葉使いを聞くとなんか呪いの言葉に聞こえてきます。あの家族を苦しめたのどこまでが彼の仕業なのかのかも分からない所がまた恐怖を作ってますよね。手短に話すねと言って間を取らず早口で恐ろしいことを淡々と喋るシーンは結構ゾッとしましたね。
結局彼は何者なんでしょうね?神の存在なのか、はたまた普通の人間であの家族が思い込みで追い詰められたか。どちらにせよ彼の不思議で邪悪な謎の存在自体も恐ろしく、奇妙でした。
この映画は「家族のうち一人殺さないと、家族全員死ぬ」というシンプルでありながら追い込むにはとってもいい題材を持ってきたのも良かったです。仮にこれを提示されたら皆悩むから、視聴者も共感出来てしまいますよね。
しかも家族が死ぬ工程が4段階に分かれていて、早く殺さないというのもじわじわ緊張感出させるし、あえてゆっくり死を迎えるからこその恐怖もあるんですよね。
さらにこれの良い所はこういう状況化で誰も綺麗ごとを言わないという事。もし邦画やハリウッド映画なら、母は「子供の命は大切だから私を殺して」と言うんですが、この映画の母親は「選ぶなら子供二人のうち一人ね。一人死んでも私がまた産めるから」と、女性の力を使って自分は助かろうとする発言をします。
さらに言うと子供二人も父親に対して命乞いをしたり自分は将来こうなりたいとか、ちゃんといい子にするとかと自分優先で助かろうとします。父親は決定権があるし死にはしませんが、将来的なことを考え学校へいき校長に「二人のうちどちらが頭がいいか」と聞くという人間のクズっぷりも見れて最高です。
たしかにかなり追い詰められてあの状況なら誰も綺麗ごとは言えませんよね。そういう死を意識したときの人間のリアルな部分を見せられると共感も出来たり、滑稽に思えたり、クズだなと思ったりと色んなことを考えさせられますが、それでも世界観を崩さず常に緊張感を恐怖感を漂わせるこの監督は素晴らしいなと同時に思いましたね。
ひとつだけ欠点。本当にちょっとだけなんですが、子供たちが餓死寸前まで食べ物を食べないと言ってる割にそこまで子供の顔つきが変わってませんでした。点滴を打っても多少はやせ細るし、子役にそういうのをやらせるというのも監督は荷が重かったのかもしれません。けどそこのリアリティがないのは結構勿体ないなとは思いました。
■評価
最終評価は・・・
☺☺☺☺☺|☺☺☺☺⚫
9/10です。
2018年はまだまだですが、今年のスリラー映画の中では一番面白かったです。それに私の大好物作品だったので満足です。この監督も好きになったので他の作品も見てみようかなと思いました。とてもオススメですので見てみてください。
はい、そんな感じで!
それでは!