『シン・仮面ライダー』
庵野秀明監督作品『シン・仮面ライダー』は石森章太郎原作『仮面ライダー』を映像化した1971年に放映された同名特撮ヒーロードラマの一応リブートになるのかな?それを映画化した作品です。
一応ここ最近庵野秀明作品で出てくる『シン』シリーズは『シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース』と称されて、『シン・ゴジラ』『シン・エヴァンゲリオン』『シン・ウルトラマン』そして『シン・仮面ライダー』の4作品のプロジェクトではありますが、今の時点ではMCUみたいにマルチバース要素とかはないです。
ちなみに『シン・仮面ライダー』以外の3作品に関しては鑑賞済みで3作品ともかなり大好きな作品です
庵野秀明がウルトラマンや仮面ライダー好きというのは知っているし、かなり力を入れているのかなとは感じます。例えばプロモーションや告知発表に関しても初回放送日、ある回や最終回の放送された日に合わせたりして告知していたりしたり、去年の『シン・ウルトラマン』は俺はかなり好きで始めてウルトラマン見たけど興奮して庵野秀明の特撮好きも同時に伝わったりはしましたね
前置きが長くなりましたが映画の感想言う前に恐らく否定的な感想になりますし、仮面ライダー知識も平成ライダー(クウガ〜Wまで)くらいの知識しかないので、初代や昭和ライダーについては知識皆無で本作を見ています。それだけご承知ください
とりあえず見終わったあと一番感じたのは「時間を返してほしい」でした
別につまらなくはなかったんです。けど面白くもないです。ツッコみたい部分はあるし、微妙な部分は『シン・ウルトラマン』にもあったけど『シン・ウルトラマン』よりかはソレが本作の方が多めにあったし、なにより見ていて映画体験だとか、映画見ていて楽しいなという気分にはなりませんでした
一応なにかの間違いかなとは思いながら、次の日に『シャザム! 神々の怒り』『長くつをはいたネコと9つの命』を見ましたが、2つの作品は楽しいし面白かったし、2つの作品にあって『シン・仮面ライダー』には無いものが明確になったのは確かです
要は庵野秀明監督の仮面ライダーが大好きというのはわかる作品なんだけど、ただただ好きな物を詰め込んで好きなものを真似したような作品なだけに感じられました。
たぶんだけど映画の観賞に正しいもクソもないけど、あえて正しい見方をするのであれば昔の仮面ライダーを思い出しながらどこが似ているかとか、どのシーンかを照らし合わせる見方があっているのかな
とりあえず映画を見てる気分にはならなかった。まだ『シン・ウルトラマン』も話数を繋げたような感じはするけれど、ひとつのストーリーとしてはしっかりされてるし、昔のウルトラマンのオマージュ部分を含めながら、少しオリジナルストーリーや改変を加えて、「友情と浪漫」というテーマを加えつつ『E.T』『地球が静止する日』みたいな未知との遭遇感も出したりしてましたが
『シン・仮面ライダー』に関してはまず大きなテーマはあるにはあるけどしっかり伝えてるか微妙だし古臭いし、その大きなテーマを隠すレベルで色んなテーマの話を盛り込んで結局どんな話かわからないし、酷い言い方をすればオマージュというより真似してるだけのシーンが多いし、多少オリジナリティはあるけど生かされてないし、結局庵野秀明の好きなものを総集編にしてるだけではあるから一本のストーリーとして見るのは難しい。上手くは言えないけど、とりあえずコレは映画見てる気分にはなれなくて、楽しくも悲しくもないです
まだクソ酷い作品を見てボロボロに言いながら「なんちゅう酷いもん見たんだ」ってなる方がまだマシ。クソ映画ってなんだかんだ記憶に残るからさ、それができるアイツらは強いよ。けどこの作品はそれがなかったです
映画の内容に関して話すとまずアクションは最悪です。ここ最近『ザ・ファブル』とか『ベイビーわるきゅーれ』とか素晴らしい邦画アクションが増えてる中で、近年だと一番最悪なアクションだと思います
特撮らしい特撮アクションはあるにはあるけど、本家の仮面ライダー達のアクションや殺陣がしっかりされてるし、映画全体的にCGがあまりにも酷いんだけどアクションのCGも酷いし、血しぶきシーンなんかもB級サメ映画でよく見るような血しぶきだったし、ちょっとアクションは褒めるべき点が見つからない
序盤いきなり始まるトラックとバイクのカーチェイスも迫力は凄いんだけど、崖から落ちる‥というかなんで落ちたのかカメラの見せ方が下手くそだったから本当になんで落ちたのかよく分からないまま始まり、そこからのアクションのカメラワークは酷いです
色んな視点だったり一人称視点からのアクション撮影と様々なやり方をするのはいいけど、1秒に2回くらい視点が変わるからカメラわざわざ100台使ってるのかと思っちゃったり、なんども視点変わる&カメラが可なり見えにくいから折角の仮面ライダーの見せ場であるアクションも台無しです
血しぶきシーンも最初は衝撃だけどよくよく見ると顔面パンチで血が出るだけだからバリエーションが少ないからもっとグロくするならグロくしてほしいし、昭和の時のシーンをオマージュするシーンもオマージュというよりそのままだったからダサく見えるし、そこからチープなCGも加わるから、なんか色々やりたいことを詰め込んだらどれも失敗してたなという感じでしたね
それに特報の仮面ライダーのOPを再現したシーンで見たクモオーグがバク転する部分とかさ、ああいうダサいけどかっこいいリアルな肉弾戦が見れるのかなとも期待はしてたから余計ガッカリではありましたよね。
そんで色々やるし妥協しなかったからさ、森山未來演じるイチローとのラストバトルもよりダサく見えて、なんであんなワチャワチャしてんだろうなとも思ったりしました。いや、這いずってでも敵を倒そうとする仮面ライダーの姿というヒーローとしての感動絵を映したいのは分かるけど、なんか今まで色んなものを見せられた衝撃やら情報量がパンクしてて、このカッコいいだろうシーンが一番ダサかったです
一番の酷い部分はキャラクターの描き方です。特に敵キャラが一番描き方はダメダメでしたね。なんか色んなオーグが現れて、倒されては現れてだったんですが、どのオーグにもバックストーリーとかなんでオーグになったのかはあるんですが、ちょっと語っては終わるか、語らずに「自分はこんな悪いやつですよ」感だして終わります。
ハチオーグの西野七瀬と浜辺美波は友達ではあった話はあるんだけど、最後ハチオーグが死にそうな時に友情系の感動ドラマを描いてはいましたが、その前にどれくらいの関係性だとか浜辺美波が抜けたときの西野七瀬の思いだとか全く触れていないからさ、勝手に感動話しにされてもかなり困ります
カマキリとカメレオンのオーグもいて、そいつはコウモリオーグにお世話になったから復讐心もある風には語られるけど、そのコウモリオーグにどれだけ世話になったとか、彼がコウモリオーグをどれだけ慕ってたのか分からないままギャーギャー「裏切り者は〜」とか言いながら死にます。
そういう流れが多くあるからさ、敵キャラに同情もできないし、カッコいいとも思えないし、ヤバいとも恐ろしいとも言えないから死んでもなにも湧き上がらないです
一応ラスボスのイチローも家族がうんたらかんたらと少しはマシに語りますが、別にこれもなんか感情が湧くことはなかったです。なんでですかね?
一番オーグ並みに酷いキャラクターだったのは本郷猛でしたね。そもそも本郷猛演じた池松壮亮は「何があった?」ってくらい演技が下手くそでした。彼演技上手いのになんか今回は下手くそでしたし、ずっと小鹿みたいにプルプル震えてたのはなんだったのか?
本郷猛も警察官だった父親が犯人に殺されて、そんな自分や家族よりも他人を大事にした父のようになりたいと語りますが、けど父の死の葛藤の解決があっさり解決されて、しかも「俺は父さんとは違う」みたいなことを言っていたから言ってること違くね?ってツッコんだりしました。しかもコミュ障で就職できないって言ってる割には始めて会う人達とすぐ会話できたりしたから、たぶんコミュ障ではないです
そんな他人を助けたい彼ですが、そもそもの話その他人を助ける描写はないです。てかショッカーが一般市民になにかする描写がないです。つまり仮面ライダーというかヒーロー作品でありがちな一般市民を助けて、敵を倒すという描写が全くないので全てに関して説得力がないのです
一応ハチオーグが小さな町の住人を操りますが、特に操っても本郷猛達の後ろに着いてきたり、ゆっくり歩きながら追跡するだけです。特に怪我やらはないです
もっとさ一般市民や子供が人質やら被害にあって、その被害を察知して仮面ライダーが駆けつけて敵を倒すというのを見たいのよ。そんで「大丈夫か?」と言ったら「ありがとう!」とか「あいつらと同じ化け物なんだから離れろ!」とか言われてもいいからさ、その描写が見たいんだよ。それが仮面ライダーというか何よりもヒーローの絵じゃんか
『シン・ウルトラマン』でもメフィラスやザラブがなぜ地球を征服するのかとか、その理由とかが納得できる部分もあったりはしたし、その征服の仕方が力もそうだけど知恵もしっかり使って、力無き一般市民やさらに政府も巻き込んだりしてますからね
だから本郷猛が他人を助けたいと言われてもそれがないから説得力はないし、ショッカーもショッカーで一般人を襲ったりしないから何をしたいのかもよくわからないし、そんなよくわからないことをしてる秘密結社をとりあえず言われた通りに一つずつ捻り潰す仮面ライダーの様はもうショッカーより立ち悪いですよ
あと細かい点を言えば博士が本郷猛を改造してショッカーを倒してほしい理由も「誰よりも正義感があるから」と言うけど、別にそれだけだったら他にも何百人もいるから彼じゃなきゃいけない理由にはならないし、クモオーグが立ち去るときも普通の車に乗ってたのが割とシュールだし、用意周到と言ってた浜辺美波はクモオーグの小型クモ(しかも沢山いる)に気づけてなかったり対処できてないし
長澤まさみが出演もしてるけど、『シン・ゴジラ』の石原さとみみたいにルー大柴のような口調で喋っててキャラクターのネタ切れ感はあったし、彼女演じたサソリオーグも銃は効かない描写あったのに最終的に普通の人間に数で負けてたから、じゃあ数で勝るなら仮面ライダーいらなくね?とはなりました
だけど色々言ってるけどイライラも怒りも湧かないのが本作で、本当に終始真顔の状態で見てました。一応泣いてた人もいたから仮面ライダーファンは嬉しい作品なのかなとは思う。
あとひとつ言うなら客層が当時の世代のオジサンばかりで、昔のファンが見るのは全然構わないが新規ファンや特に子供が見てて楽しめるかと言われたら微妙なんだよ。
特に子供に関しては話がムズい部分もあるだろうし、先も言った一般市民が敵に襲われる描写もないから「劇中敵が襲ってくる→「自分たちの世界にもいるかもしれない。怖いな」という気持ちになる→仮面ライダーが倒す→仮面ライダーが倒したから安心だ」というたぶん個々によって違うけどそうした気持ちで楽しめないなとは思った